多様化する地方上級公務員試験

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地方公共団体 公務員試験を知る
室長
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第1章では、大卒程度行政職公務員試験の特徴について、国家一般職と地方上級の例を交えて説明してきましたが、このページでは地方上級試験(行政職)にスポットをあてて詳しく紹介いたします。

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地方上級公務員試験とは

公務員試験の世界における「地方上級とは、全国47都道府県、東京都特別区、及び全国20政令指定都市計68の自治体における上級職公務員採用試験(大卒程度以上)のことを指し、同じく地方公務員である市町村職員(政令指定都市除く)採用試験とは区別されます。なお、「東京都含む首都圏も‟地方”上級?」などという些末な疑問不要です。

短大卒程度の中級(Ⅱ種・Ⅱ類など)や高卒程度の初級(Ⅲ種・Ⅲ類など)といった区分の採用試験を実施している自治体もありますが、上級区分に比べ採用人数がかなり少ないのが現状です。

地方公務員上級職採用試験の名称は「大卒程度」「Ⅰ種」「Ⅰ類」「上級」など自治体によって様々で、行政職区分の名称は「行政」「一般行政」「行政事務」「一般事務」などが一般的です。さらに行政A・行政B、行政Ⅰ・行政Ⅱなど、採用方式や受験資格等によって区分されています。

採用試験内容(出題科目、出題数、配点比率等)や受験資格、採用の流れも各自治体によって様々ですが、一部の自治体を除き、一般的な行政職の第1次試験は全国一斉の同日(毎年6月の第4日曜日)に実施されます。

令和元年時点では、北海道(5月下旬)、東京都・特別区(5月上旬)、大阪府・大阪市(5月下旬)が独自日程で第1次試験を実施しています。

ただ、近年は、社会人経験者や特異な経験・能力を有する者など多様な人材を確保するという観点から、従来の一般的な行政職区分とは受験資格や年齢要件を別にした、「特別枠」や「新方式」などの別枠の行政職採用試験を独自日程で実施する自治体も増えてきています

経験者枠や特別枠、新方式などの自治体独自の試験区分の詳細は、各自治体のホームページ等で確認いただくとして、以下、従来の一般的な大学卒業程度の地方上級行政職区分採用試験を中心に説明いたします。

地方上級行政職区分の受験資格

各自治体の代表的な行政職区分の受験資格は、大学卒業程度とされているとおり、大学卒業者(卒業見込者)でなくても受験することができます。高卒であっても、年齢制限にかからなければ、受験できることになります。

この年齢要件が、行政職区分の唯一の受験資格です。これも自治体によってばらつきはありますが、下限が22歳、上限がおおむね29~35歳前後に設定されています。(いずれも採用年の4月1日時点での年齢です。)

近年、 幅広い層から有用な人材を募るという観点から、 上限年齢は緩和の傾向にあり、今後も地方公務員採用試験における年齢要件は緩和の傾向が続くものと推測されます。

筆記試験の出題形式・出題科目

地方上級における1次選考では、ほとんどの自治体で、教養科目と専門科目に分けてそれぞれマークシートによる多肢選択式のペーパーテストが実施されるほか、記述式の教養論文(作文)試験が課されます。

また、これとは別に、公務員としてふさわしい人材かどうかを判断するための適性検査(クレペリン検査やYG性格検査が一般的)が、1次選考以降のどこかの段階で実施されます。

室長
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適性検査は、人間の能力や性格を知るためのシンプルなペーパーテストであり、特別な対策は不要です。ただ、大阪府のSPI3など、教養試験の代わりに適性検査を実施する自治体を受験する場合は、それなりの対策をしておくべきでしょう。

多肢選択式の筆記試験については、一部を除くほぼ全ての自治体が外部の公益法人 (公益財団法人日本人事試験研究センター)に試験問題の作成・提供を委託しており、その類型は出題科目、出題数、選択解答性の有無等により、大きく下記4種類に分けることができます。

①全国型

多くの自治体が採用している形式で、他の試験形式の基本型となっています。全問必須解答が原則ですが、自治体が独自に科目や問題を加減して出題数を調整したり、選択解答制にするなど、変形型もあります。

②関東型

関東地方各県の多くが採用している試験形式です。教養試験、専門試験とも選択解答制を導入しています。自治体独自の科目や問題を加え、出題数を増やしている変形型もあります。

③中部・北陸型

中部・北陸地方各県の多くが採用している試験形式です。教養試験、専門試験とも全問必須解答です。

④法律・経済専門

行政職の専門選択分野等で、「法律」「経済」の区分がある自治体で実施しています。

上記の例外は、先に挙げた「特別枠」や「新方式」など自治体独自の試験区分のほか、試験実施日を独自日程とし、専門試験を実施せず、教養試験の代わりに職務基礎能力試験やSPI(性格適性検査)を実施する北海道・大阪府・大阪市・堺市・神戸市、出題内容や出題構成が独特な東京都・特別区などが代表例です。

特に、専門科目の記述式試験が課される東京都(3題選択回答)は、他の自治体とは異なった特別な対策が必要になります。

独自方式の採用試験を実施する自治体はまだ少数派ですが、今後は、より柔軟で多様な試験方式を採用する自治体が増えてくる可能性があります

いずれにせよ、失敗しないためには、志望する自治体の最新の採用情報をホームページなどで直接確認して、内容に応じた適切な受験対策を講じる必要があります。

なお、多くの自治体が採用する上記試験型と東京都及び特別区の科目別出題数については、下記ページを参照してください。

人物試験の概要と特徴

地方上級における人物試験は、筆記試験とは打って変わって各自治体が独自色を打ち出した内容となっています。

個別面接は全ての自治体で実施されていますが、1回きりの自治体もあれば3回行う自治体もあるなど、力の入れ具合が様々です。また、わずかですが集団面接を実施する自治体もあります。

都道府県の7割以上が集団討論(グループディスカッション・グループワーク)を実施している一方で、政令指定都市で実施しているのは3割程度です。

他にも、プレゼンテーション面接を導入する自治体があるなど、各自治体が工夫を凝らして人物試験に取り組んでいる模様が見て取れます。

後述するように、地方上級では近年、各自治体が筆記試験よりも人物試験に大きなウエイトを置き、人間力の高い優秀な人材を獲得するための仕組みづくりに注力しているようです。

種目別配点・最終合格決定方法

地方上級試験(行政職)の選考内容・種目別配点・最終合格決定方法等の概要について、文字で説明するよりも一覧で確認いただいた方がてっとり早いと思いますので、下記をご覧ください。

まず、都道府県職員採用試験の種目別配点等一覧を、3つのブロック(北日本、東日本、西日本)に分けて掲載いたします。

都道府県公務員上級採用試験(行政区分)

都道府県上級試験種目別配点一覧(北日本)
北日本
都道府県上級試験種目別配点一覧(東日本)
東日本
都道府県上級試験種目別配点一覧(西日本)
西日本

一覧には記載していませんが、各自治体の共通事項として、国家公務員と同様に各試験種目には基準点(足切りライン)が設定されているのが一般的です。(基準点に満たない種目がある場合、総合得点にかかわらず不合格となります。)

また、論文試験については、一部自治体を除き、第1次試験合格者に対して採点され、最終合格者決定時に総合得点に合算されるのが通例です。

特筆すべきは、人物試験の配点の高さでしょう。筆記試験の配点を大きく上回るどころか、最終合格者決定の際に1次試験等の結果がリセットされる自治体が約4割もあります。

「公務員試験における人物試験とは」の記事の中で詳しく説明しているとおり、地方公務員試験では人物重視の傾向が非常に強まっている現状が垣間見えます。

また、国内の急速な国際化に対応するためか、過去にはなかった外国語資格加点を行っている自治体もちらほら存在します。配点は高くありませんが、これも、地方公務員試験の多様化傾向の一例と言えるでしょう。

続いて、 政令指定都市職員採用試験の種目別配点等一覧です。

政令指定都市公務員上級採用試験(行政区分)

政令指定都市上級試験種目別配点一覧

政令指定都市は、過半数の自治体が3次試験まで実施しているのが特徴的で、都道府県よりもさらに独自色が強い傾向にあります。

人物試験の配点が非常に高いという特徴は都道府県と同様で、試験方法や合格者決定方法は自治体によって多種多様です。もはや、やりたい放題です。

なお、都道府県でも政令指定都市でもない東京都特別区は上記に掲載していませんが、東京都と同じく配点等は非公表となっています。最終合格後に希望する区で別途面接があるなど、採用プロセスがやや特殊なので、詳細は受験案内で確認してください。

志望自治体の試験内容は必ず受験案内で確認すること

以上、数が多いので個別の自治体に関する試験内容の詳しい説明は割愛いたしましたが、地方上級公務員試験が自治体によっていかにバラエティに富んだ内容で実施されているか、おおむねご理解いただけたかと思います。

地方創生が声高にうたわれている現在、地方公務員の採用試験方法の多様化傾向は著しく、年度によって内容が大幅に変更される可能性もあります。

くどいようですが、志望する自治体の試験内容は、日程等実施スケジュールや受験資格も含め、必ず最新年度の受験案内を直接確認するようにして、その上で最終合格までの対策と戦略をしっかりと練るようにしましょう。

公務員試験総合ガイドというサイト内の全国自治体別ガイドNAVIというページには、各都道府県及び政令指定都市の採用試験案内ページへのリンクが一覧で掲載されているので、地方上級公務員試験に関する各自治体の最新情報の確認に大変便利です。

室長
室長

本ページに掲載している地方上級種目別配点等一覧表は、各自治体によって公表されている受験案内から作成したもので、内容は何度か確認してはいますが、細かい点で齟齬等がある場合はご容赦ください。

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