「科目別の必要学習時間と1日の学習科目数の予測」の記事では、いろいろとスケジュール表の作成方法を述べましたが、作り方の記述だけではいま一つピンとこない人もいるかと思いますので、1年計画、6か月計画の2通りの独学スケジュール表の参考例を、2つの記事に分けて示します。
国家公務員一般職、地方公務員上級試験の合格を目指す例で、試験がある年の6月下旬までの計画で作成しておりますが、当サイトでは「捨てる」としている科目や、経済事情、社会政策など、他の類似科目の学習で代用できる科目は省略しています。
また、教養科目については、参考例では世界史や数学といった単科目ではなく、人文科学や自然科学というように一括りで表現していますが、実際に作成する際は、自分が選択する科目ごとにスケジュールを作成するようにしましょう。
人物試験対策についても、当然可能な限り筆記試験対策と並行して進めなければなりませんが、ここではスケジュール表への記載は省略いたします。
大学新卒者なら大学の定期試験、社会人なら仕事など、公務員試験勉強をほとんどできない期間があると思いますが、それもここでは考慮しませんので、ご了承願います。
まずは1年計画です。1年の学習計画で使う過去問集と参考書、またスケジュール表は下記のとおりです。スケジュール表の色の付いているところが勉強期間を指し、5月中旬以降は追い込み期間として赤色にしています。
計画例では刑法、商法および会計学を捨てていますが、国税専門官の志望順位をある程度高く設定している受験生は、国際関係あたりを捨てて会計学を勉強する必要があります。なお、各科目とも基本的に問題集のテーマ単位や章単位の学習量で計画しています。
1年間の学習計画で使う教材
- 現代文:新スーパー過去問ゼミ(以下スー過去)、出たDATA問
- 英語:速読速聴・英単語 Core1900、 スー過去
- 判断推理:畑中敦子の判断推理の新兵器!令和版、スー過去
- 数的推理:畑中敦子の数的推理の大革命!令和版(以下畑中本)、スー過去
- 資料解釈:畑中敦子の資料解釈の最前線!令和版、スー過去
- 人文科学:読むだけですっきりわかる○○史、公務員試験 本気で合格! 過去問解きまくり!(以下解きまくり)、新光速マスター、大学受験用参考書
- 自然科学:解きまくり、大学受験用参考書
- 時事:公務員試験速攻の時事、速攻の時事実戦トレーニング編、直前対策ブック
- 教養論文:落とされない小論文、寺本康之の小論文バイブル
- 憲法:スー過去、出たDATA問
- 民法:民法まるごと講義生中継(以下「まる生」)、スー過去(民法Ⅰ・Ⅱの2冊)、出たDATA問
- 行政法:行政法まる生、出るとこ過去問セレクト(以下「セレクト」)、スー過去
- 労働法:スー過去
- 政治学・行政学・社会学:公務員試験 行政5科目まるごとパスワード(以下「まるパス」)、スー過去
- 国際関係:スー過去
- 経済学:試験攻略入門塾速習!〇〇〇経済学(以下「速習!」)、スー過去(ミクロ・マクロの2冊)
- 財政学:スー過去
- 経営学:スー過去
- 全般:過去問500(国家一般職、地方上級)
学習期間1年の場合の計画例(横目盛は5日間区切り)
これはあくまで参考例なので、便宜上、各科目とも基本的に「新スーパー過去問ゼミ」のテーマ単位(章ではありません)の学習量で計画しています。
ただし、いきなり過去問演習ではなく導入本を読むことを推奨している科目については、その分も考慮しています。(例:新スーパー過去問ゼミの民法1は全部で21テーマ、民法2は18テーマなので、1日あたり2テーマ学習するとしたら、民法科目の過去問演習所要期間は39÷2≒20日間。民法1、2とも過去問演習前にまるごと講義生中継を読むので、それぞれ5日以内に読むとして、民法科目の総学習所要期間は30日間。学習初期は余裕を持たせて35日間で計画する。etc.)
また、学習初期はかなり余裕を持たせて学習所要期間を設定している一方で、2周目以降は演習速度が上がっていることを考慮して、所要期間を短くしております。
以下、1年計画例を説明します。
1年計画の流れ
6月~7月
- 判断推理・数的推理・資料解釈:「畑中本」で一通り学習する
- 民法:「まる生」(民法Ⅰ、Ⅱともそれぞれ5日間以内に一気に読む)→「スー過去」(1日2テーマずつ)で1周。2周目はスー過去で復習
- 経済学:マクロ経済学→ミクロ経済学の順でそれぞれ「速習!」を2周する
8月~10月
- 英語:「速読速聴・英単語 Core1900」を1日2テーマずつ読む
- 現代文:「スー過去」を3日に1題ぐらいのペースで解く
- 判断推理・数的推理・資料解釈:毎日数問ずつ解く。「畑中本」でパターンを頭に叩き込む
- 人文科学:選択する2、3科目を「解きまくり」で学習(歴史科目は「読むだけですっきりわかる〇〇史」をできるだけ事前に通読すること)。確認用に、大学受験時の参考書を使う
- 自然科学:選択する2、3科目を「解きまくり」で学習。確認用に、大学受験時の参考書を使う
- 憲法:1周目から「スー過去」を使う。1周目が終わればすぐに2周目に入る。少し間を開けて3周目
- 行政法:1周目は「まる生」を3日間以内に一気に読む→「セレクト」。1周目が終わればすぐに2周目。2周目から少し間を開けて3周目
- 民法:「スー過去」の3周目を始める
- 経済学:「速習!」から「スー過去」に移行
- 政治学・行政学・社会学:1周目は「まるパス」を数日以内に2回ほど読む→「スー過去」
11月~12月
- 英語:「速読速聴・英単語」を毎日2テーマずつ読む。5日間に1題程度のペースでいいので、「スー過去」等を使って問題も解き始める
- 現代文:「スー過去」等問題集を用いて3日間に1題ぐらいのペースで問題を解く
- 判断推理・数的推理・資料解釈:毎日数問ずつ解く。「畑中本」に飽きたら「スー過去」に移行
- 人文科学・自然科学:いずれも「解きまくり」を使って学習
- 政治学・行政学・社会学:「スー過去」2周目、3周目
- 憲法・民法:「スー過去」4周目(苦手分野に絞って1日2~3テーマのペースで)
- 経済学:「スー過去」2周目
- 行政法:「セレクト」から「スー過去」に移行
- 国際関係:「スー過去」を1日1~2テーマのペースで間を開けず2周
1月~3月
- 英語:「速読速聴・英単語」を毎日読み、問題集を5日間に1題解く
- 現代文:問題集を用いて3日間に1題問題を解く
- 判断推理・数的推理・資料解釈:毎日数問ずつ解く
- 人文科学・自然科学:「解きまくり」を使って学習
- 時事:「速攻の時事」テキスト編を通読。2周ほど読んでから、トレーニング編に着手財政学:「スー過去」が新年度版(改訂版)であることを確認して、概ね1か月間で2周する。少し間を開けて3周目
- 経営学:「スー過去」を1か月間で2周する。少し間を開けて3周目、4周目
- 労働法:「スー過去」を1か月間で2周する。少し間を開けて3周目
- 国際関係:「スー過去」の3周目、4周目
- 憲法・民法:「出たDATA問」へ移行
- 経済学:「スー過去」の3周目
- 行政法:「スー過去」の2周目
- 政治学・行政学・社会学:「スー過去」4周目(苦手分野に絞って1日2~3テーマのペースで)
4月~6月
- 時事:「速攻の時事」テキスト編→トレーニング編→テキスト編の繰り返し、直前対策ブックの確認
- 教養論文:「落とされない小論文」を2回程度読んでから、本試験まで「寺本康之の小論文バイブル」を何度も読み返し、模試で実際の記述を採点してもらう。
- 全般:「過去問500」で実践演習、「出たDATA」などワンランク上の問題集で主要科目の強化、問題集・模試の復習
最終仕上げ段階の期間を設定するかどうかで、得点力の伸びが全然違います。
1年計画例総評
公務員試験独学対策の1年計画例をご覧になっていかがでしたでしょうか。
この計画例だと、4月以降の学習仕上げ期間に入る前に、教養論文を除けば十分合格レベルに達していることでしょう。自信を持ってよい勉強量です。
補足として、数的処理については、上で挙げている大卒程度畑中シリーズが学習初期に苦しいようであれば、高卒程度畑中シリーズから入ってもいいと思います。
また、原則として主要科目は同じ問題集を4周していますが、3周程度で1冊の問題集をほぼマスターできるのであれば、4周目はやらずに他の問題集に移っても構いません。
周辺科目であれば、専門科目を上記計画例のうち2科目ぐらいまでなら捨てても合格レベルを確保できるので、自分の置かれた状況や併願試験種に応じてより無駄を省いたスケジュールを考えましょう。
1年あるので比較的ゆとりを持って学習できると思いますが、この計画例の最も非現実なところは、やはり大学の授業や社会人の労働時間を考慮していない点でしょう。よって、受験生によってはこのようなスケジュール通りに学習を進めることは困難だとは思いますが、1年計画で受験に臨む場合のあくまで一例として参考にしていただければと思います。
なお、国税専門官など1次試験で専門科目の記述式試験がある公務員試験を受ける場合でも、その対策は多肢選択式試験用の学習にメドがついてからにしましょう。科目の概要や重要論点がつかめている分、専門記述の勉強がスムーズになります。
東京都Ⅰ類のような専門試験すべてが記述式の試験を受ける場合でも、多肢選択式試験を採用する公務員試験を併願受験するのであれば、多肢選択式の対策が先です。ただし志望順位によっては、勉強の時間配分を調整する必要があります。
人物試験などの2次試験対策については、1次試験対策の合間を縫って情報収集するなど、早い時期に始めるに越したことはありませんが、本格的な対策は1次試験が終わってからでも間に合います。特に地方上級では配点比率の高い2次試験ですが、本試験まで残り期間が少ない場合は、ひとまず2次試験対策は置いておき、筆記試験対策に専念しましょう。