集団討論における役割分担については、討論を進行し話をまとめる「司会」、討論の進捗管理を行う「時計係」、受験者から出た意見や提案をメモする「書記」が一般的です。
これらの役割がうまく機能すれば討論の質そのものが向上するので、グループ全体の評価が上がります。
では、各役割の特徴や、その役割を担当する際の注意事項を見ていきます。
司会(Chairperson)
討論の進行役である司会の仕事は
- 討論の流れをつくる
- 討論の節目で話を整理する
- メンバー全員に対して発言機会を均等に与える配慮をする
- 討論が混迷したら流れを軌道修正する
といったところでしょうか。
要するに、司会は討論をマネジメントする超重要な役割だということです。集団討論が成功するか否かは半分以上司会進行役の出来にかかっていると言っても過言ではないでしょう。
司会の重責は重く、それゆえにその職務を全うして集団討論の成功に大きく寄与できれば、試験官から非常に高い評価を得ることができるでしょう。
逆に、討論をうまくコントロールできずに結論が出ないなど集団討論が失敗に終われば、自分はもちろんグループ全体の評価を下げることになるという、ハイリスクハイリターンの役割が司会です。
リーダーシップはもちろんバランス感覚や調整力が要求される難易度の高い役割なので、うまく場をコントロールする自信もないのに「司会をやれば試験官から評価されるはずだ!」などと安易に司会を選ぶようなことは絶対やめるべきです。他のメンバーにとっても迷惑です。
「司会をやれば」評価が上がるわけではなくて、「司会を担当して討論をうまくコントロールしてグループ全体として集団討論を成功に導いて」初めて評価されるのです。
グダグダな司会で討論そのものを壊してしまえば、むしろ最悪の評価を食らう危険性があるのです。
別に司会役をせずとも集団討論においてアピールすることは十分可能なので、よほど討論進行役に自信がある受験者は別として、ハードルの高い司会役は担当しない方が無難だと思います。
集団討論が成功に終わればグループ全体の評価が上がり、結果として自分の評価も他のグループの受験者に比べ相対的にアップすることが期待できるので、自分よりも空気が読めそうな人、司会ができそうな人がいるのであれば、その人に司会役を任せるのが吉です。
したがって、討論開始前に、話をリードしたり周りに配慮できそうな人であり、かつ「司会役をやりたそうな人」を見つけた場合、「○○さんが嫌でなければ、○○さんに進行役をお願いできないでしょうか」などと発言すると、進行役の人も助かるし、「周りが見えている」と試験官から評価されるかもしれません。
さて、それでもどうしても自分が司会をしないといけない、あるいは司会をした方が良いと判断されるケースはあります。
それは、「①自分以外に司会をまかせることができそうな人がいない場合」と、「②討論のテーマに関する知識があまり無いため、積極的に意見を出す役割よりも皆の意見をまとめる役割の方がうまく立ち回れそうな場合」です。
①の場合はつまり、「集団討論の成功率を考えて、他の受験者に任せるぐらいなら自分が司会役を担当した方がマシ」と判断した場合ですね。空気の読めない受験者に司会役をされたがゆえに討論が失敗に終わって迷惑を被るのは絶対避けたいところなので。
②は要するに「司会役に逃げる」という手法ですね。難しい役どころである司会役に逃げるという表現は違和感があるかもしれませんが、司会進行にそこそこ自信があって、かつ討論のテーマに関する知識が乏しいと判断した場合は、この選択肢も有りかと思います。
ただこのように、自分が司会役をやろうと判断した場合でも、試験官の討論開始の指示と同時に「待ってました!」といわんばかりに「私が司会役をさせていただこうと思います。」みたいな感じでいきなり司会役を名乗り出るのは、試験官からのチェックが厳しくなる恐れがあるので注意が必要です。
若干の間を持ったあと、「もしよろしければ」などと探りをいれつつ名乗り出るか、だれも司会役をやりたがろうとしない中で「えー、では時間がもったいないので私でよければ…」という感じで司会を名乗り出ると、控えめで冷静な部分を試験官にアピールできるし、他のメンバーに安心感を与えることができ、スムーズに討論に入っていけるかと思います。
また、司会としての討論進行時の注意点ですが、進行役だからといって単にみんなに話をふりながら討論を進めればいいというものではありません。
司会をしながらも自分の意見を交えつつ進行しないと、自分をアピールすることができません。よって、上記②の理由により司会役を選んだ場合でも、「私はこのように考えるのですが、皆さんの意見はどうでしょうか?」みたいな感じで、一般論的な意見でもいいので必ず自分の意見を発してから周りに意見を求めるようにしましょう。
時計係 (Time keeper)
時計係の仕事はその名のとおり時間を管理する人、タイムキーパーです。
最初に設定した時間配分のとおりに討論を進行できるよう、「残り5分で解決案策定の時間は終了です」といった感じで時計を確認しつつ、討論の進捗管理を行う役割です。
この時計係は実は結構おいしい役で、「時間を気にしなければいけない」という仕事がある分ガンガン意見を出す必要性が無い一方で、「時間になりましたので、ひとまず意見はこのぐらいで置いておいて、次の議論に移りましょう」といった感じで、司会に代わり「討論の節目で発言する」ことができるのです。
時計さえもっていれば誰にでもできる役どころであり、集団討論のテーマに関する知識がそれほどなくても集団討論への貢献度を表現しやすい役割と言えます。
ただし、時計係であったとしても、討論のテーマに対する意見や考えを全く出さないという姿勢は、試験官目線で言うと受験者の積極性を評価しにくいため、NGです。
また、「議論に熱中し過ぎてタイムキープし忘れる」などは最悪なので、議論をリードしたい人は司会や下記で紹介する役なしを選択した方が良いでしょう。
あたりまえですが、時計を持っていないとそもそもタイムキーパーの役を担当することができないし、どの役割を担当する場合でも持っていた方がいいので、腕時計は忘れないように。
書記 (Clerk)
言うまでもなく、皆の意見をメモする人です。
一般的に、集団討論における役割の中でもこの書記が最も「意見を発言する機会が少なくなりがちな」役割だと言えるでしょう。
というのは、書記の仕事は「みんなの意見を聞き、それを紙に書くこと」であり、そこそこの人数で実施される集団討論においてはその作業が結構大変なので、自分が発言する機会を確保しにくいからです。
これは討論のテーマに対する知識があまりない受験者からすれば魅力的な役割に見えるかもしれませんが、逆に言えば「試験官にアピールしにくい」という欠点を持つ役割でもあります。
皆の意見をメモにより常に把握しているので、それらの意見にプラスアルファの意見をかぶせて発言できるというメリットもありますが、みんなの意見を書き写すことに終始して集団討論が終わってしまうというリスクは否定できないので、書記を選ぶのには慎重になる必要があります。
一方で、グループの意見を正確に記録しつつ、整理した内容を討論の切れ目でタイミング良く的確にアナウンスするなど、書記として司会をサポートする役割をしっかりとこなすことができれば、かなりの高評価を得ることができる役どころでもあります。
簡単そうに思えて、高い評価を狙う上では実は難易度が高い書記ですが、集団討論開始時に無理に書記という役割分担を作らず、各自でポイントをメモするようにして、結論を出す際にそれらを司会役の人に集約してもらうという手法も、場合によっては有りかと思います。
もちろんその場合は司会役の負担が増すため、司会役の能力が低いと判断される場合は避けるべき手法です。
役なし (Free)
司会でも時計係でも書記でもない、いわゆる自由な人を、ここでは勝手に「役なし」と称しましょう。通常5人以上のグループで実施する集団討論では、受験者の約半分が必然的に役なしとなります。
集団討論は、別に必ず何かの役割を担当しないといけないというわけではありませんので、司会やタイムキーパーや書記がサクサク決まってしまって、自分は何の役割分担もないからと言って焦る必要はありません。
むしろ、何の役割にも縛られていない方が自由に発言しやすいし、場合によっては調整役になり、場合によっては積極的に意見するなど、柔軟な姿勢で討論に参加することが可能となります。
ただ、討論テーマに関する知識がほとんどない場合は極めてリスキーです。何の役割分担もない分、積極的に意見を出さないといけない立場にさらされる可能性が高いので、あまり得意でない分野のテーマが出た場合は、何らかの仕事を担当するようにしましょう。
しつこいようですが、集団討論は共同作業です。はじめて顔を合わせる他人同士が良いチームワークを短時間で構築するのは簡単ではありませんが、各自が「集団討論を成功させよう」と気持ちをひとつにして、役割をきちんとこなすことができれば、良い結果を生み出すことができるでしょう。